
ソーシャルレンディングとは?分かりやすく説明してみます
2017/01/06
日本ではまだまだ聞きなれないソーシャルレンディングという言葉。ソーシャルレンディングは、インターネットを経由して広く薄くお金を集める、クラウドファンディングの1つの形です。
そしてクラウドファンディングの中でも、事業に融資する融資型クラウドファンディングのことを「ソーシャルレンディング」と表現します。
海外では急速に市場が立ち上がりつつあるソーシャルレンディング市場ですが、日本でも少しづつ市場の拡大が続いており、ソーシャルレンディング運営会社の数も増えつつあります。
そもそもソーシャルレンディングとは何か?、そしてどんな特徴があるか等、基本的な内容を分かりやすく解説しました。
当記事を読むことで、おおよそのソーシャルレディングの内容について理解ができるようになります。
目次
ソーシャルレンディング=融資型クラウドファンディング
ソーシャルレンディングとは何か?目的のソーシャルレンディングの前に、クラウドファンディングの理解が必要になります。
クラウドファンディングというのは、クラウド=大衆+ファンディング=資金調達、ということで、日本語に直訳すれば”大衆からの資金調達”ということになります。
そして、このクラウドファンディングに必要不可欠なのがインターネット。インターネットを経由することで、資金調達をしたい人や団体が一般市民から広く薄く資金を集めることができるようになりました。
このインターネット経由での資金調達の仕組みを、クラウドファンディングと言います。
クラウドファンディングには5つの種類が存在
インターネットを経由して、広く薄くお金を集める仕組みのクラウドファンディングですが、その内容は5つの種類に分けることができます。
①寄付型
②購入型
③融資型
④ファンド型
⑤株式型
では以下に5種類について詳細を見てみましょう。
①寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングは、冒頭に「寄付」と付いている通り、お金の出し手は”対価を求めないタイプです。要するに寄付です。自然災害の被災者に対する寄付や活動に賛同するNPOに対する寄付が、その代表的なものとなります。
iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が、寄付型クラウドファンディングでiPS細胞の研究費を募ったことが知られています。
②購入型クラウドファンディング
特定のプロジェクトやビジネスに対して資金を提供するものです。調達できた資金で事業家は事業を行い、資金提供者はその事業からの成果物を受け取ります。
例えば農業のプロジェクトの場合、クラウドファンディングで調達した資金で野菜を育てて、そしてその収穫できた野菜を資金の出し手に分配する、というのが一つの典型例になります。
ただしプロジェクトが失敗すれば、資金の出し手は何も得ることができません。例えば製品化に失敗した、台風で野菜がダメになった等という事態になれば、資金の出し手は得るものなく資金だけを失うことになります。
③融資型クラウドファンディング
お金を借りたい個人や企業、プロジェクトに対して、個人がお金を貸し出すものです。この融資型クラウドファンディングのことを、ソーシャルレンディング、と言います。
金利○%でこの案件にお金を貸しませんか?、とインターネット上で資金を集め、そして集めたお金でビジネスを行い、契約通りの金利を払い・契約通りの期日にお金を返済する、というのが融資型クラウドファンディングとなります。
お金の出し手が個人の小口資金の集合体か銀行か、という違いはありますが、企業等の資金調達に当たるため、基本的には銀行の融資の代替手段となります。そして特に海外では、融資型クラウドファンディングの拡大によって、銀行は今後存在意義が薄れてしまうのでは?、という議論も生じるようになっています。
④ファンド型クラウドファンディング
ファンド型はビジネスに対して出資を募り、出資者には売上の一部が「配当」という形で還元されるタイプとなります。ただし、単に売上の一部を配当として出している、というより、資金提供先のサービスや製品も配当に付加することで、購入型としての性質を持っている案件が多くなっている。
本分野ではミュージックセキュリティーズ社が老舗とも言うべき存在。日本酒や農業、工芸品等を同社はファンド型クラウドファンディングで資金調達の支援を行っている。
⑤株式型クラウドファンディング
株式型は、出資先の企業の株を取得するものです。上場株ではないため、簡単に売ることはできませんが、成功の場合のリターンは高く、ハイリスクハイリターンの案件となります。日本では株式型クラウドファンディングは長く規制されていましたが、2015年4月から解禁され、今後日本でも広がりが期待されている分野となっています。
しかし融資型やファンド型と違い、配当の原資が株式の売却益のみとなるため(配当も含まれるが基本は株式売却益)、長期間の出資とハイリスクを前提にした投資になると考えられます。
以上がクラウドファンディングの5つの形となりますが、「③融資型クラウドファンディング」については一般的に「ソーシャルレンディング」と呼ばれているため、当サイトでも、ソーシャルレンディング=融資型クラウドファンディング、として今後記事を書き進める予定です。
日本ではクラウドファンディングというと、出資に対して成果物を配当としてもらう「②購入型クラウドファンディング」のイメージが強いのですが、世界的に市場が拡大しているクラウドファンディングは主に③融資型クラウドファンディング=ソーシャルレンディングの分野となっています。
ソーシャルレンディングの仕組み
ソーシャルレンディング=融資型クラウドファンディング、ということが分かりましたが、実際にどんな仕組みになっているかを、次に説明します。
ソーシャルレンディングの登場人物は3名です。
①資金の借り手(事業家)
②ソーシャルレンディング運営会社
③資金の出し手(投資家)
この3名が次のような流れで、お金のやり取りをすることになります。
①借り手がソーシャルレンディング運営会社に対し融資の依頼
②運営会社が借り手の事業計画書の実現可否を判断
③運営会社がGOサインを出すことが出来れば、運営会社はインターネット上で資金の募集を発表
④投資家が出資を決定
④出資者から集まったお金を運営会社が借り手に渡す
⑥借り手は調達した資金を元手に事業を開始、約束の金利支払い及び約束の期日に返済
⑦運営会社が借り手から受け取った金利を投資家に分配
⑧期限到来で借り手は全額を運営会社経由で投資家に返済
基本的には資金の借り手、投資家ともに、ソーシャルレンディング運営会社を通じてお金のやり取りを行うことになります。よって事業家、投資家ともに信頼できる運営会社かどうかを見極めることが非常に大切となります。
ソーシャルレンディング運営会社は取りまとめ役
ソーシャルレンディングと言わず、クラウドファンディングで非常に重要な役割を担っているのは、投資家と事業家の間を取り持つソーシャルレンディング運営会社となります。運営会社が存在しなければ、ソーシャルレンディングというビジネス自体が成り立たない、と言っても過言ではありません。
しかしながら忘れてはいけないのは、ソーシャルレンディング運営会社は取りまとめ役、という点です。
運営会社は事業家の計画の審査を行ったり、もし事業が滞った場合、資金回収の努力はしますが、ソーシャルレンディングの基本的な考え方は、インターネットを経由して資金の受け手と出し手を結びつける、というもの。よって基本的な考え方としては、投資家が事業家に直接お金を貸している形となっています。
よって事業がうまく行かなくなった場合等は、投資家が直接責任を取ることになります。いわゆる「自己責任」です。
よって何かあった場合でも、ソーシャルレンディング運営会社が融資先に代わって投資家に対して資金を返済することはありません。運営会社はあくまでも、取りまとめ役、という立ち位置となっています。
ただし、失敗案件が続けば、あの運営会社の案件は信頼ならない、と言うことになり、投資家が離れソーシャルレンディング事業が立ちいかなくなってしまう可能性があります。よって運営会社は取りまとめ役とは言え、自社の事業の継続を考えれば、いい加減な審査や対応は自らの命取りになりかねない、と言えます。
日本ではソーシャルレンディングもファンド形式となっている
ソーシャルレンディングの基本的な考え方は、インターネットを経由して個人が事業に直接お金を出す、というものです。しかしながら、日本においてはソーシャルレンディング運営会社が各案件毎にファンドを設立して、そのファンドから個別の事業にお金を出す、という形となっています。(日本の貸金業法では、業務としてお金を貸し出す登録が必要とるため)
よって「融資型」クラウドファンディング、と言っても、実際は投資家が直接事業に融資をするのではなく、運営会社が募集する融資ファンドに出資する、という形になります。
お金の借り手や融資案件について
資金の出し手=投資家は、大衆からの資金調達、ということから通常の個人投資家ということは容易に想像できますが、それではソーシャルレンディングのお金の借り手、即ち融資案件はどういったものが多いのでしょうか?
日本のソーシャルレンディング案件は、これまで以下の内容での募集がありました。
・不動産に対する融資
・会社に対する融資
・太陽光発電システムへの融資
・上場株式を担保とする融資
・保険債権を担保とする融資他
通常の会社への融資であれば銀行が対応できるため、不動産への融資等、何かしらのプロジェクトに対して融資を行う、という案件が多くなっています。ただし様々な種類の案件が存在していますが、不動産に関連したソーシャルレンディング案件が多くなっています。
案件の内容からは、日本のソーシャルレンディングは、銀行が手掛けにくい不動産を始めとする個別のプロジェクト案件(銀行は会社に融資するのが前提であり、個別のプロジェクトへの融資は不得意)から、市場が拡大していると言えます。
資金の出し手(投資家)から見たソーシャルレンディングの特徴(メリット)
日本でも銀行が不得意とする分野から、徐々に広まりつつあるソーシャルレンディングでの資金調達ですが、資金の出し手(投資家)から見ると、どんな特徴があるのでしょうか?
大きく分けると以下の3点の特徴があります。
①高い金利が見込まれる
日本では日本銀行によるマイナス金利の導入により、金利で収益が上げることが非常に難しくなっています。そんな中でもソーシャルレンディング案件は、年利で5~10%という案件が非常に多く存在しています。
金利では殆ど稼げなくなっている現代日本において、金利収入を得られるソーシャルレンディングは非常に魅力的な投資先と言えます。
関連記事:ソーシャルレンディングの高利回りの理由は不動産にあった!
②小口での投資が可能
ソーシャルレンディングは1案件、5~10万円から投資が可能です。株式投資やFXそして不動産投資では、投資を行おうとすれば少なくとも50~100万円の資金が必要となりますが、ソーシャルレンディングの場合、1桁少ない額から投資が可能です。
まだソーシャルレンディング自身がそれほど知られた存在ではありませんが、投資のハードルという観点では、少額からの投資が可能であり、非常にハードルの低い投資商品となっています。
③分散投資が可能
ソーシャルレンディングの案件は、1つのソーシャルレンディング運営会社の中で数多く存在しています。よって小口の資金を案件毎そして会社毎に、時期をずらして投資することができます。
一つのカゴに全ての卵を盛ってはいけない、というのがリスク管理の要ですが、ソーシャルレンディングの場合、小口で投資が可能というだけでなく、案件毎そして会社毎に資金を分散して投資が可能です。
また投資のタイミングをずらすことも可能であり、一気に殆どの案件で損失を計上してしまった、という状況になりにくい運用を、自ら行うことが可能です。
資金の出し手(投資家)から見たソーシャルレンディングのリスク
上記のようなメリットがある反面、当然ソーシャルレンディングもリスクが存在しています。ソーシャルレンディングのリスクは大きく分けて2つのリスクがあります。
①貸し倒れのリスク
5~10%の高い金利収入を得られる、というのは裏を返せば、それだけのリスクを取っている、ということに他なりません。形の上では、投資家が直接事業家に融資する、という形のソーシャルレンディングであり、コストという観点では銀行融資に比べて高い利回りは期待できますが、リスクゼロということはありえません。
株・FX・不動産と言った投資商品は全てリスクあってのリターンですが、ソーシャルレンディングもリスクあってのリターンという構図は何ら変わりありません。よって、お金を出したものの、金利収入も元本の返済もない・・・、という事態の到来は充分ありえるので注意が必要です。
②ソーシャルレンディング運営会社のリスク
ソーシャルレンディングにおいて、投資家と事業家を結びつけるのがソーシャルレンディング運営会社の役目となります。そして投資家の出した資金や、金利や返済金は全てソーシャルレンディング運営会社を経由してやり取りされることになります。
残念ながら、ソーシャルレンディングという市場自体が立ち上がって数年の市場であり、その運営会社自体もまだ小規模な会社が殆どです。アメリカではレンディングクラブという上場会社が登場していますが、2016年秋時点で日本では上場しているソーシャルレンディング運営会社は存在していません。
よって運営会社自体が信頼に値する会社かどうか、という点にも投資家は注意する必要があります。運営会社も失敗案件が続けば事業が立ちいかなくなるリスクがあるため、案件の精査には力を入れているものの、融資先の管理がしっかりできているかどうか、投資家の資金と会社の資金をしっかと分別管理しているかどうか等、運営会社としての役割は多岐に渡っています。
ソーシャルレンディングへの投資を検討する際は、どんな案件に投資するか、という観点での検討も必要ですが、この運営会社は信頼に値する会社か、という観点での検討も必要となります。
尚、ソーシャルレンディングのリスクについては、下記の記事で掘り下げていますので、合わせてそちらもご覧下さい。
こうなって欲しくはありませんが、リターンの裏にはリスクがあります
日本のソーシャルレンディング運営会社
インターネットの普及を背景に、ここ数年で立ち上がりつつあるソーシャルレンディング市場。現在の所、日本で活動している主なソーシャルレンディング運営会社は下記となります。
・AQUSH(アクシュ)
・オーナーズブック
・Crowd Lease(クラウドリース)
・Crowd Bank(クラウドバンク)
・ガイアファンディング
・クラウドクレジット
・LCレンディング
・ラッキーバンク(Lucky Bank)
(詳細は「ラッキーバンク(Lucky Bank)について」をご覧ください)
・maneo(マネオ:業界最大手)
(詳細は「業界最大手maneo(マネオ)について」をご覧ください)
・OwnersBook(オーナーズブック)
・SBIソーシャルレンディング(大手ネット証券SBI証券のグループ会社→詳細は「SBIソーシャルレンディング及び案件について」を参照)
・スマートレンド
・スマートエクイティ
・みんなのクレジット
・トラストファイナンス
日本でも既に多くのソーシャルレンディング運営会社が活動を開始しています。ソーシャルレンディング、と言う言葉自体、正直まだそれ程知名度がある訳ではありませんが、日本でも着実にソーシャルレンディング市場が拡大しつつあります。
尚、2017年1月のスタート時点での各社の資金量を下記で紹介しています。
関連記事:2017年1月時点でのソーシャルレンディング各社の資金額一覧
まとめ
ソーシャルレンディングの理解のためには、ソーシャルレンディング=融資型クラウドファンディング、という構図を知ることが必要です。よって本稿では、クラウドファンディングの説明からスタートしました。
ソーシャルレンディングに投資を行うことで、投資家は5~10%という非常に高い金利収入を得ることができます。しかしながら、リターンの裏にはリスクがある、というのは大前提となります。
ただしソーシャルレンディングへの投資は、5~10万円で小口且つ分散が可能であり、少額の資金からでも投資が可能であり株やFXそして不動産投資と比べると投資のハードルが意外に低いという特徴も有しています。
海外で一歩先に市場拡大が始まったソーシャルレンディングですが、日本でも活動しているソーシャルレンディング運営会社が増えており、その市場は着実に拡大していると言えます。
とは言え、まだまだ知名度の低いソーシャルレンディング。今後認知度のアップとともに、利回りの高さから資産運用の一つの形として徐々に広まっていくのではないでしょうか?
一緒に読んでおきたい関連記事
・ソーシャルレンディングの危険性やリスクを解説