グリーンインフラレンディング騒動に見るmeneoのグループリスク、maneoのIPOは延期か?
2018/07/10
グリーンインフラレンディング(GIL)のファンド募集停止をきっかけに、様々な問題が吹き出て気がつけば業界最大手のmaneoの問題ともなりつつあります。
IPO目前とも言われていたmaneoですが、GILの問題を受けてIPOは一旦仕切り直しで延期の可能性が高いと考えられます。
maneoのIPOのためにはmaneoグループの位置付けの明確化が必要不可欠となるのではないでしょうか。
目次
グリーンインフラレンディングを中心に事態が急展開
ソーシャルレンディングブログ界隈でグリーンインフラレンディング(GIL)のファンドが募集を停止したことが話題になっています。
その後、GILが資金を当初の目的とは別の目的で流用した等、メディアで報じられる事態となり、maneoに対し当局が検査に入っている、との報道も出ています(もし検査に入っていても、それ自体は直ちに問題にはなりません)。
気がつけばGILと言うより、maneoの問題になりつつある状況ですが、ソーシャルレンディング業界最大手且つグループとして業界に圧倒的な立場を築いていたmaneoが正念場を迎えています。
グリーンインフラレンディングについて、その問題点
2018年に急速に募集ファンドの残高を積み上げたグリーンインフラレンディングですが、特徴はファンドの利回りの高さにあります。
年利回り10%オーバーの案件を多く募集しており、投資家が高い利回りに魅力を感じ、次々と投資を行った、そんな状況です。GILはmaneoグループを形成する1社でもあり、事業者リスクのあるソーシャルレンディング投資においても、maneoグループなら、ということでmaneoグループとしての信頼性もあり、資金残高を積み上げています。ちなみに6月26日時点で残高は約200億円(同社サイトより)。クラウドバンクの320億円に次ぐ規模にまで急成長しています。
ただしGILのファンドには大きな問題点が存在しているのも、知られている部分。それはGILが関与するプロジェクトに対する融資のファンドである点。プロジェクトがうまく回っている時は問題ありませんが、もしGIL自体がこけてしまうと、ファンドから融資した資金は丸ごと焦げ付いてしまう可能性があります。
ファンドビジネスとして考えた時、本来ファンドは運営会社と利害関係のない第三者に投資なり融資するのがあるべき姿です(元々の目的がファンド運営会社の関係会社に融資や投資する、という名目でファンドを設立した場合は別ですが)。
GILのビジネスモデルの問題点は当サイトが指摘するまでもなく、様々なサイトで指摘がされていますが、とは言えそれがビジネス的にNGかと言えばそんな訳ではありません。
ただし外部から資金調達して身内で資金を回す機関銀行的な仕組みを、過去の歴史的経緯もあり原則認めていないのが金融庁。
※機関銀行→事業会社が銀行を子会社にして、その銀行子会社から融資等で銀行の豊富な資金を引き出す行為
GILのビジネスモデルは、NGではありませんがファンド運営に携わったことのある人間から見ると、ビジネス的・対金融庁的にリスクがあるなー、というのが正直な感想です。
ただし、ビジネス的なリスクはありますが極端な話で言えば投資家に迷惑かけなければよい訳で、リスクを承知の上で投資するなら構わないと思います。ただしファンド運営ビジネスの観点では金融庁のお目こぼし的に可能なビジネスモデルでしょう。しかし大手を振って展開できるビジネスモデルではありません、少なくとも。
maneoグループとは?maneoのIPOに向けて解決すべき問題
GILはmaneoグループとして活動している会社です。ソーシャルレンディング市場で一大勢力となっているmaneoグループですが、それではmaneoグループとは一体何か?
maneoと資本関係の有無は分かりませんが、maneoグループ各社は少なくとも子会社という訳ではありません。maneoの資金募集のシステムを利用していたり、maneoの様々なインフラを利用していたりと、結構ボンヤリした関係です。
別にmaneoがIPO(株式上場)しなければ、全然今のままでもいいんです。ただしmaneoは2018年3月期の業績も良いですし、VCが株主に入っているのでIPOを目指していると考えるのが自然。
IPOを行う会社は、人・モノ・金の関係を全て明確化する必要があります。maneoグループで言えば、人・モノ・金の関係をしっかりと筋道たてて第三者に説明できるかどうか。
単にmaneoのシステムを手数料支払って利用しているだけなら、問題ありませんが、それってmaneoグループと言えるのか、という問題がたちまち生じます。maneoグループの位置付けの問題、実は結構深いテーマです。
もう少し具体的に分かりやすい問題としてmanneoグループの1社であるGILが、自社で利用する資金をファンドで投資家から集めている、となると話はとたんにややこしくなります。
maneoの子会社が投資家からファンド形式で資金を集めて自らのビジネス展開を行っている、と考えれば、IPO的観点からは金融庁・東京証券取引所は当然ダメだししますし、主幹事証券会社も、やめてください、と指導します。やめないとIPOできませんよ、と。
GILの場合、資本関係ではmaneoのグループ会社ではない、とするのであれば、maneoグループと言うの止めさせてください、こんな展開が予想されます。外部の個人投資家を株主に迎えることになるIPOでは、人・モノ・金の関係は内と外でシッカリ分けるように指導されますし、それができないと基本的にIPOできません。
昨今子会社上場も少なくなりましたが、子会社の上場って親会社と人と資金とモノやサービスが本当に親会社と遮断されているかが見られます。ま、大人の事情が働くので、ソフトバンクが携帯子会社IPOを計画、とかがあるのですが。
話を少し戻してmaneoの上場準備という観点でGILを見ると、maneoグループとしての問題と、IPOしようとする企業グループがグループ内で投資家の資金を回している、という2つの問題があります。
集金力の無いファンド運営会社はいずれダメになる可能性が高い
ファンドビジネスに関わっていたことのある管理人の経験で言えば、自らの集金能力の無いファンドはいずれダメになる可能性が高いです。
ファンドビジネスって、最後にモノを言うのは集金力。一方で、投資で成功するかどうかって、極論すると分からない部分があります。プロ野球でピッチャーの勝ち数は読めるけど、打率は波があるから読めない、そんなイメージです。
だから打率=投資一本で行くと、調子悪い時=ファンドのパフォーマンスが落ちるとホントそのファンド運営会社はダメになります。その点、集金力のある会社の場合、1つのファンドのパフォーマンスが多少悪くとも、資金を集めて次のファンドで挽回してしまえるので、集金能力の有無ってファンド運営会社にとって、ホント重要です。
その面で集金をmaneの看板に頼っているmaneoグループは、イザと言う時に真価が問われると思います。けどねファンドの募集って、楽じゃありません。ソーシャルレンディングは若干景色が違いますが、ベタに証券会社の営業的な能力が求められますので。パフォーマンスの悪いファンドを売る営業って、相当大変ですので・・・。
グリーンインフラレンディングはmaneoとは人・モノ・金の関係はありませんと宣言できれば問題解決
maneoのIPOと言う観点では、GILはmaneoグループとは言ってますが、IPO観点では人・モノ・金の関係が遮断できています、と言ってしまえば、それで問題解決です。
ただしやはりそうは行かないんだろうなぁ、と。確かに資本的には子会社ではない関係ですが、ヒトとモノ=サービスの両面で両社は密接な関係にあるのではないかと、考えられます。GILの件でmaneo名でリリース出しているのが一例。それにGIL以外にも、maneoグループの各社は集金などの足回り部分はmaneoに頼りきりの会社もある可能性があります。
手数料もらって契約書巻いて、ビジネスとしての付き合いとしてしまえば問題解決なのですが、そんな簡単な関係ならmaneoグループとは言わない訳で、maneoとしてはmaneoグループをどうするかって、IPOの観点で非常に大きなテーマです。その中で、ある意味一番の懸念ともいえるのがGILの資金の流れの問題。今後どうなるか分かりませんが、maneoがIPOするのであればGILが今のままでよいとはなりません。
maneoのIPO準備は一旦仕切り直しでは?
2018年3月期に業績を大きく伸ばしたmaneoは、株主としてVCが複数社参入しており、IPOの期待が高くなっていました。
関連記事:IPOに現実味、maneoの2018年3月期決算分析
ただし今回の事態を受けてIPO準備は一旦仕切り直しの可能性は高いと考えられます。maneoとGILは直接的な関係はないということになっても、であればmaneoグループの関係整理は避けられないでしょう。
完全にグループ会社してしまうか、それが無理なら業務提携先としての位置付けを明確にするか。maneoグループという、ボンヤリとしたグループ関係は、IPOを実行するならどこかで線引する必要があると感じていましたが、図らずもGILの騒動で外部にその必要性を強く認識させる結果となったようです。
maneoもグループの各社を利用して、手数料抜いたりと持ちつ持たれつの部分があるので、maneoグループの関係の明確化って実はそう簡単ではないと考えられます。ただしもうここまで世間やお役所の注目を浴びてしまったmaneoグループの関係性、その関係の整理なしにはIPOは役所(金融庁・財務局)も認めることは無いでしょうから、maneoもIPOのためには腹をくくるしかないんだろうな、と思います。
まとめ
2018年はラッキーバンクの騒動もあり、ソーシャルレンディング業界も仮想通貨業界と同様、なんだか騒がしい状況となっています。
GILの件は今の所は投資家に損が発生したといった被害は生じていないのですが、今後投資家に被害が生じるようだと、更に問題は大きくなる可能性があります。
GILだけでなくmaneoにまで問題が拡大していますが、本件が今後どのような展開を見せるのか興味深く状況を注視したいと思います。
PS その後、GILから野党・細野豪志議員への5000万円の貸し付けが発覚し、事態は思わぬ方向に進展しています。
「細野豪志議員に政治献金していたグリーンインフラレンディング、ファンド運営会社の基本がなってない・・・」
・maneoも現段階では未上場会社なので、投資家としては把握しきれない部分があります。その点、上場企業グループが手掛けるソーシャルレンディングなら安心感があります。上場会社が取り組む主なソーシャルレンディングは下記2社です。
当記事の関連記事
・maneoに対する行政処分の意味、グリーンインフラレンディングに対するmaneoの監督責任が問われている